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宮古島とサシバ

サシバが、宮古島にいつごろから来ていたのかの確かな記録はありません。 サシバは宮古島の民話の中で語り継がれ、民謡にも歌われていることから、かなり以前より宮古島に渡っていたものとみられます。

また、サシバは宮古島の方言と思っている人も多いようですが、 鳥類分類ではタカ科 サシバ属と分類されている正式和名です。

昔から宮古島には、日本でも一番大きなサシバの集団が休息のために飛来(ひらい)していました。 

1960年代くらいまでは、サシバの季節は宮古島の子どもたちにとっても楽しい時期で、捕(つか)まえてペットにして遊ぶ光景もよく見られたようです。
また、サシバが今のように保護鳥となっていない時代には秋の短い期間、自然が与えてくれた恵みとして料理して食べることもありました。

1972年、沖縄が本土に復帰した年にサシバは保護鳥となり、捕獲(ほかく)が禁止されました。 その後宮古島には野鳥の会ができ、
伊良部島にサシバが飛来する時期にはしっかりと守るためのパトロールと、飛来数の記録や保護を目的とした多くの活動がなされています。

    

サシバ: 

タカ目 タカ科 サシバ属
英語名: Butastur indicus


日本国内の分布: 

4月頃に夏の渡り鳥として、日本にやって来ます。 
北海道をのぞく日本各地のあまり高くない地点(1,000メートル以下)で、繁殖(はんしょく)活動をします。

また、中国北部やモンゴル、ロシア、北朝鮮、韓国での繁殖(はんしょく)も確認されています。

10月には宮古島を経由して、マレーシアやニューギニアまで南下して冬を過ごします。

一部のサシバは、越冬(えっとう)のために東南アジアに渡らず、沖縄の南西諸島で冬を越すことがあります。


特徴: 

雄の体長は約45cmで、雌は約50cm。 翼を広げた時の長さは、105cm-115 cmで、体長に比べ翼が大きめなのが特徴です。

 
生態: 

サシバのエサは、住む地域によってかなり差があるそうです。 中央農業総合研究センターの記録によると、巣に持ち帰るエサの種類で一番多いのが、カエルと昆虫類です。 
そのため、各地のサシバの保護グループは、エサとなるカエルの数を増やす活動をしているそうです。 また全国で観測している人たちの多くが、ヘビやトカゲ、野ネズミなどを巣に持ち帰るのを確認しています。  

宮古島ではサトウキビの畑で、スプリンクラー(散水機)の近くにできた水たまりで水を飲み、畑の周りで昆虫を探している姿をよく見かけます。


国際保護鳥と絶滅危惧種:

サシバは、レッドリストといわれる世界の絶滅危惧種の8つのカテゴリーの中の第6位、LRといわれる低リスクカテゴリーに分類されています。
現在東南アジア一帯で生息(せいそく)するサシバの数は最新統計のある2009年で、約10万羽ですが、越冬する東南アジア各地の開発による自然破壊や棲息(せいそく)環境の急速な変化があることから、ひき続き監視が必要とされています。

なお サシバの日本での分類ですが、環境省のまとめでは 18の県で 「準絶滅危惧種」、 16の県で 「絶滅危惧2種」、 6つの県で 「絶滅危惧1種」 とされています。

サシバの渡りについて: 


サシバの渡りの距離は短いものでも 4,000kmで、インドネシアやミャンマーまで行くと 5,600km にもなります。
サシバは春日本に来る時は、あまり大きな群れで来ませんが、毎年秋には大きな集団で南に向かいます。 
これは渡りの経験のない、若い鳥がたくさん群れにいるので、皆で助け合うためなのかも知れません。
  (その理由は、こちらでお読み下さい。)

サシバの集合場所: 

日本各地で夏を過ごし繁殖(はんしょく)したサシバには、秋の渡りのための集合場所が3ヶ所あります。

1. 愛知県 渥美半島伊良湖 (あつみはんとう いらこ)
  本州北部から中部地方に住んでいたサシバが集まります。
 
2. 鹿児島県 佐多岬 (さたみさき)
  中部、中国地方や九州各地で暮らしていたサシバのグループと、第一集合地の伊良湖で休息していたグループが合流します。
ここに、日本全国で夏を過ごしたサシバが集合します。
 
3. 宮古島市 伊良部島 (いらぶじま)
  鹿児島県に集合したサシバは、大軍団となって宮古島に飛来(ひらい)します。 
(ただし、一部のグループは、途中奄美大島の徳之島などで休息するそうです。 また宮古島でも、伊良部島だけでなくほかの島で休息することもあるようですから、これは餌の確保のためと思われます。)
 
    

宮古島におけるサシバの飛来数:

宮古島野鳥の会は、1973年よりサシバが宮古島に渡ってくる数を伊良部島と宮古島の2ヶ所で調査しています。 最も多かった1980年の54,000羽から、最も少なかった2001年の8,386羽まで、年によりかなりばらつきがあります。

サシバの飛来数は天候によって大きく変わることがありますが、その年の日本各地での繁殖環境により数が変化します。 2011年の飛来数は、10,028羽 と最近の平均の半分でした。


宮古島で2つのグループに分かれて出発: 

宮古島での休息のあと、サシバは二つのコースに分かれて飛び立ちます。 

ひとつは、台湾の南部にある満州郷(マンジョウ・シャン) から恆春鎮(ヘング・チュン)岬までの地域。 

もうひとつは、フィリピン北部の離島であるバタン島です。 

 
台湾コースはそのあと中国本土に渡り、ミャンマーからマーレーシアまで南下し、各地で棲息(せいそく) します。

フィリピンコースは、バタン島からフィリピン諸島を経由してインドネシアまで南下をつづけ、この地域の島々に分散し暮らしているようです。


サシバの飛行能力: 

飛行スピード:
  平均スピードは時速 40km で、かなり早いです。
   
1日の飛行距離:
  平均 480kmで、那覇から八重山の一番西側まで1日で行く事ができます。
   
1日の飛行時間:
  サシバの朝の出発時間は6時頃といわれていますが、観測記録ではノンストップで 1日に12時間も飛び続けることもあります。 
サシバは空のストロングマンですね。
   

 
集団飛行の理由:  
  サシバは遠くまで飛ぶために、とても科学的な方法を使っています。
鷹柱(たかばしら) という言葉を知っていますか?
鷹柱とは、タカ科の鳥が遠くに移動する時に使う独特な飛び方です。 上昇気流を上手く使って空高く上り、
できるだけ遠くまでグライダーのように空を滑り降りるので、体力の消耗(しょうもう)をおさえることができます。

1. ホット・スポットといわれる、上昇気流の発生している所を見つけます。
2. 上昇気流を使ってぐるぐると回りながら、できるだけ高く上がります。
3. 上昇気流の筒(つつ)の中を、たくさんのサシバが円を描きながら上がっていくので、鷹柱(たかばしら)と呼ばれるようになりました。
4. 一番高い所で、進みたい方向に鷹柱(たかばしら)から飛び出します。
5. 高度差を利用して、できるだけ遠くまでグライダーのように飛んでいきます。
6. リーダーの鳥は地表に近いところまで下ると、上昇気流が発生している次のホット・スポットをさがします。
7. 目的地に着くまで、この動作をくり返します。
 
また、大きな集団で渡るのは若くて体力的に弱く、経験不足のサシバの体力を消耗(しょうもう)させないで遠くまで連れて行くためと思われます。
   
サシバはどこで冬を過ごしているのだろう?

サシバは宮古島から台湾コース、フィリピンコースの2つに分かれますが、その後以下のアジア各地に向い畑や湿地帯(しっちたい) から、高度 2,000m くらいまでの山岳地(さんがくち)で過ごします。

台湾コース:
  台湾、 中国、 ベトナム、ラオス、 ミャンマー、 タイ
   
フィリピンコース:
  フィリピン、 インドネシア、 シンガポール、 マレーシア、 ティモール
サシバの研究者:

宮古島の元高校教師で前の宮古島市教育長 の久貝勝盛さんは、サシバの研究者として全国でも有名です。 久貝先生のサシバに関する研究書がたくさんありますので、図書館などで借りて読んでください。
 
                        
 
REFERENCES:
サシバの広場をまとめるにあたり、以下の資料を参考にさせて頂きました。




1. IUCN Red List Status: BirdLife's Globally Threatened Bird Forums,
2. 環境省自然環境局野生生物課: レッドデータブック
3. Birdlife International: Important Bird Areas in Asia. Key Sites for Conservation. Wakefield, UK
4. Taiwan International Birding Association: Birding in Taiwan
5. Migratory Animal Pathological Survey (MAPS): Applied Scientific Research Corp, Thailand & Defense Technical Information Center OAI-PMH Repository, USA
6. 中央農業総合研究センター: 鳥獣害研究室
7. 久貝勝盛: サシバの秋の渡りと集団渡来地の住民とのかかわり (沖縄県立博物館)
8. 琉球新報、宮古毎日新聞: 宮古島への飛来数に関し、ネット版アーカイブより
   
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